医療法人社団百子会 やまな病院

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故 前理事長 山名正俊のアトリエ

第11回「唱歌」 2003
6.18

先日親友宅を訪問した時に、彼は黙って2冊の本を差し出しました。
そのまま借りた本を帰って開いてみました。

それらは「春の小川はさらさらいくよ」、「この道はいつか来た道」と題された本で、きれいな写真と共に昔懐かしい歌詞があり、歌にまつわるエピソードが小さく書かれていました。どの歌も懐かしい歌ばかりで、小さな声で口ずさんでみました。次から次へと歌っていると、中には咄嗟にメロディーが出て来ないものの、途中の歌詞からメロディーを思い出して歌えたものも幾つかありました。

「春の小川はさらさらいくよ」の方には知らない歌が2曲ありましたが、「この道はいつか来た道」はすべて憶えていました。我ながら良く憶えていたものだと改めて感心したことです。昔のことに、歌詞の文字や意味も知らず憶えていたものも沢山あり、とても新鮮に感じた事でした。

それにしてもこれらの歌詞の高尚さと難解なこと、一方で自然な言葉は隔世の感があり、こんな難しい言葉を使っていたのかと感嘆します。昨今の日本語からは想像できないものでしょう。

それらの一つに「村の鍛冶屋」という歌があり、子供の時に憶えていたものとは歌詞が違っていました。解説によると、時代で歌詞を変えたとか。そんな事があるのかも初めて知りました。歌は世に連れ、と云うそうですが、それらの時代とか背景について興味深く読んだことです。

そういえば、患者さんで書道の先生をしていらっしゃる方が申していました。「子供の時にしっかりと叩き込んだものは生涯身に付いて、途中暫く空白があってもその空白は埋めやすいものですよ。小さい時の躾はとても大切なので、子供達には書道を通じて躾もしております。その為に親御さんに家庭でもしっかりするよう云うこともあります」。

貸して下さった友に、このような事などを含めて御礼方々伝えたところ、ムフフと笑って、写真がきれいだったでしょう、と云われ、「この本をもう一組取り寄せ愛生園の患者さんに差し上げましたら、涙を浮かべられました。これらの曲の幾つかを、愛生園へ男声合唱団に行って貰って、聴いて頂くプランを立てています。その時は私も一緒に一つくらい歌います。とまれ、写真があまりにも美しかったのでお見せしました。

このごろ学校で唱歌が歌われなくなったそうですが、それも含めて今の公教育を受ける子供達は本当にかわいそうです。自分も間違って覚えていた歌詞の如何に多いかにびっくりしました」、との御返事がありました。

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